協働推進・市民社会づくり自治体職員の皆様へ
目指せ! 街のソムリエ(阿蘇・内牧温泉の取り組み)
山本優子(特非・今治NPOサポートセンター)
阿蘇・内牧にユニークな取り組みで観光客を集める商店街がある。その名も「Tomaっとベリーな街」。街全体をテーマパークに見立て、食べ、遊びながら街散策ができるプロジェクトだ。この商店街は、阿蘇大観望まで車で15分の立地条件。宿泊施設・町湯が充実していて、年間1700万人の観光客が滞在する。ただ、商店街を歩く人は皆無だった。「日曜日にシャッターをおろしているのだから、素通りのまちになるのを黙認しているようなものだった」、プロジェクト実行委員長の吉澤寿康さんは振り返る。地元商店街が立ち上がるきっかけになったのは、2004年5月に開催された「うちのまき食べ歩こう!」という旧阿蘇町役場主催のイベント。吉澤さんを含む5名の商店街住民が、「食べ歩こう!」イベントの案内人を行政に依頼された。
「内牧がこんなにおもしろいなんて、目からうろこだった」、イベント終了後、案内人を務めた住民が共通に抱いた感想だった。行政に継続的にイベント開催を持ちかけたが、叶わないことが分かる。「それなら自分達でやろう」と、観光客を予約制で案内するガイドの組織を早々に立ち上げた。そこから、メンバーによる知恵と資源の持ち寄りが始まる。街の特産品・トマトを使い、各店が自慢の一品を用意、来訪者をサービスする。ある店ではトマトのロールケーキ、ある店ではトマトの絵葉書といった具合だ。街の統一感を醸し出すことは、対外的なアピールになることはもちろん、加盟店の連帯感も育んだ。 手づくり散策マップ、加盟店が一目で分かる手づくり看板、周遊のしかけとなる各種企画。これらは毎月第二火曜日に開催される定例会でみんなが決めて、みんなが作り、みんなで動く。はじめはとても小さな集まりだったが、参加者が参加者を呼び、実働部隊も着実に育ってきた。「日曜日、店を開けるようにしよう」、「トマトなどの食材では参加が難しい店がある。参加できるしくみをつくろう」、そんなルールも自然に決まっていく。今では、行政や地元商工会議所にオブザーバー参加を依頼されるまでの、地域に認知される組織となった。
大所帯になっても、定例会は自由におしゃべりできるという雰囲気は変わっていないという。それは吉澤さんの人柄が創っているのかもしれない。人と人との関係性を豊かにしていく場づくりセンスを持っている。ただ、関わる組織が増えてくる中で、意識の差はひしひしと感じているそうだ。ここに来るまでも、実は商店街と宿泊施設は目指すべきものが違うと、事実上、商店街だけの取り組みとなった時期もあったそう。そんな時、商店街メンバーは、毎日交代で、主要な宿泊施設の観光バス到着時刻に合わせて出向き、「Tomaっとベリーな街」の趣旨を説明してまわったそう。少しずつ商店街と宿泊施設の溝は埋まり、商店街と宿泊施設を結ぶアイテム・「必殺・ひだりうちわ」という企画が誕生した。人の心を動かすのは「共感」以外の何者でもない。まちづくりに必要なリーダーシップとは、独走をせず、みんなの意見を引き出し、ビジョンの共有を忍耐強くすすめる力だと感じた。彼は実は地元出身者ではない。広島県福山市からの移住者だ。地元の人には当たり前すぎで分からない、地域の宝物を見抜く嗅覚が優れているのかもしれない。「商店、宿、行政が同じ意識、ビジョンでまちづくりができる体制を整えたい。実践を積み上げていくことだけだ。」彼の言葉が印象に残った。





